この記事の出典は、農業協同組合新聞【電子版】です。
JA東西しらかわ(福島県)の営農指導員が6月6、7日の両日、千葉県松戸市の千葉大学大学院園芸学研究科で営農研修会を実施した。昨年2月に両者が締結した連携協定の一環で、農協の営農指導員が、国立大学法人で営農に関する指導を受けるという画期的な取り組みだった。
JA東西しらかわの園芸事業は、トマト、イチゴ、キュウリやニラなどが中心で、その7割が県外に出荷されている。園芸生産販売事業を進めていく上で、栽培技術や、的確で効果的な病害虫防除技術などについて千葉大の研究成果を生産者のほ場(現場)に活かす取り組みだ。
今回は、JA東西しらかわに在籍する15人の営農指導員のうち20~50代の10人が参加し、2日間にわたって講義と実例研修を受けた。
(中略)
2日間の講習を終え、現場で実際に役立ちそうなポイントを聞くと、ほとんどの営農指導員が、湿度が光合成に与える影響について挙げていた。
営農指導員歴7年の男性は、「ハウス内の温度と湿度の関係を具体的に教えてもらったのはよかった。理屈がわかっていると農家組合員に説明しやすくなると思います。農家さんによって投資できるコストも違うが、現場に帰って指導してみたい」とコメント。
また、「トマトは水の量を気にしていましたが、湿度という概念がこれまでなかった」と言うのは主にトマトを中心に14年の営農指導員の女性。むしろ、ある程度乾いた環境でないと病気になると思っていたそうで、「さっそく現場で試してみたい」と話した。さらに、光合成と二酸化炭素の関係についても、「日差しがあってトマトやキュウリがどんどん光合成すると、葉の付近の二酸化炭素が無くなって光合成ができなくなってしまうということを知った」と言い、冬場の閉め切ったハウスで使っている二酸化炭素を簡単に発生させる固形資材を、「夏のハウスでも応用してみたい」と話した。
1909(明治42)年に千葉県立園芸専門学校として創立した千葉大学園芸学部は、国立大学法人で唯一の園芸学部で、野菜、果樹、花きといった園芸品目の栽培・販売方法、食品製造、ランドスケープなどの研究・開発等をしている。
主に水稲を担当しているという50代の営農指導員は、「千葉大は最先端だから一度は見てみたかった。これだけの施設を揃えることは現実にはコストがかかってできないが、何かしら参考になる。一人で見るよりは何人かで見て覚えていれば後から相談もできるし、若い人を育てるためにもこうした研修会をやってもらえるのはありがたい」と話した。
また、別の営農指導員は、「少人数で質問もできて期待以上でした。今回聞いたことを持ち帰ってすぐに農家さんに知らせたい。実際にやってみて夏野菜の結果は9月には出ますから、次の機会にまたいろいろ聞いてみたい」と話した。
今回の研修会を担当した浄閑准教授は、「生産者にとって大事なのはいかに儲かるかなので、そこにつながる技術や情報を、お伝えできるよう心がけました。現場でハウスごとの特徴をみながら最適なものを取り入れていただければ」と話した。
また、大学の立場から今後の産学連携の取り組みについて、「千葉大学は、100年近く歴史がある中で多くの先輩方が産業と近い距離で研究を進めてきた。それを我々も引き継いで学生にも現場にとって何が必要なのかを伝えていくことが大事だと思っています」と話した。