【同窓生トピックス】おめでとう! 安井清子さん (32期・ラオス山の子ども文庫基金代表)

 2022年の8月4日、32期の安井清子さんが「令和4年度外務大臣表彰」を受けることが発表されました。受賞者個人197名のうちの1人で、「日本とラオスとの相互理解の促進」への貢献が評価されてのことです。ずっと安井さんの活動を応援してきた同期にとって、これは至極当然の快挙です。安井さんは私たちの誇りであり、希望の星です。彼女の屈託のない笑顔、まっすぐな人柄に、私たちはどれだけの元気をもらってきたことでしょう。この場をお借りして、しばし安井さんの「自慢話」をさせていただきたいと思います。

 このたびの受賞理由を見てもわかるように、安井さんの活動のおかげで、私たちはラオスの人々とつながることができています。彼女は30年以上にわたってラオスの子どもたちのための図書館を作る活動をしてきました。彼女がそろえた本、彼女の紙芝居や人形劇が、子どもたちの目をいくつ輝かせてきたかわかりません。彼女の活動に胸を打たれた富士の同期、同窓生たちは、直接訪問も含めて、さまざまな形でラオスの人々との間に絆を結んでいます。また、彼女が支援してきたシヴィライ村のモン女性たちが一針一針丁寧に刺した刺繍の工芸品は、私たち同窓生の毎日の暮らしに彩を与えてくれています。2021年11月に行われた大人の文化祭でも、モン女性たちの作ったバッグ、ブックカバー、ポーチなどが瞬く間に売れて大人気でした。この収益も、シヴィライ村の子どもたちの文房具代や薬代になり、役にたてていると思うと嬉しい気持ちになります。

 ところで、私にとっての安井さんの最初の思い出は、1977年の富士高の入学式にまでさかのぼります。安井さんが新入生代表として抱負を述べるのを聞いて、私はとってもびっくりしました。なぜなら、安井さんは身体は小さいのに、声がとても大きくて、はっきり、堂々としていたからです。それは、15歳の娘だったらほんのわずかでも感じるかもしれないはにかみとか、ためらいというものが一切ないスピーチでした。新作のトラの唸り声を、安井さんがアーッと表現するのを聞くたび、いつもあの入学式でのみずみずしい響きを思い出します。牛の首を絞めるトラの声の恐ろしいこと!

 2022年の1月、その『トラがとなりに住んでいたころ』(ivory space and Daienji Volunteer Association 発行)が出版されて私の家にも届きました。長い間書き溜めていた絵と文が、ようやく本の形になりました。ラオスで安井さんが暮らしている場所の、近隣の人たちが話してくれた子どものころの思い出を録音して記録し、自身でラオス語を書き起こし、絵を描いたという作品です。開発が始まる前の、自然と共存する人々の生活の記録が生き生きとしたタッチで描かれています。安井さん自身も言っていることですが、これは本当に新型コロナ禍のおかげとしか言いようがありません。安井さんは家にいることが多く、じっくり書き描くことができたそうです。そして、私たちも安井さんの講演を何度かZoomで企画したり、他の方が企画してくださったのを聞いたりできました。富士の現役の生徒に、安井さんの講演を聞かせたいという同期の吉田裕之さんが長年抱き続けてきた夢もかないました。これはなんと、対面で実現したのです。大人の文化祭でも安井さんが大画面にラオスの自宅から登場してお話してくれました。そのときには紙芝居の形だったものが楽しい絵本になったのです!

 安井さんの活動はまだまだ広がっていきます。どうかみなさん、楽しみにしていてください。次の講演や作品に期待していてください。また、いろいろな形で発信しご紹介してまいります。

外務省の発表(2022年8月4日) 令和4年度外務大臣表彰

令和4年度外務大臣表彰受賞者リスト(個人)(PDF)
   (リスト通番47です。)

『トラがとなりに住んでいたころ』pp.4-5

「この動物たちの頂点に立ってきたのがトラです。トラはアジアの森に君臨してきた森の王様なのです。」「トラ。怖いですよね。現在、普通は動物園でしかトラを見ることはできませんが、ラオスでは、たった50年くらい前まで人間の住む村のすぐ隣の森にトラが住んでいました。」(原文ラオス語:翻訳安井清子)

『トラがとなりに住んでいたころ』pp.24-25

「トラはめったに村の中まではやってきませんでしたが、村の近くで、トラの足跡が見つかることがありました。そんな時には子どもたちは『トラが出たから、今日は家にいろ』と言われました。
 その日、セーンはお兄ちゃんと、村はずれの水田にカエルを取りに行くところでした。すると、すれ違ったおじいさんが、『トラの足跡があるぞ。家に戻れ!』と言いました。でも二人は冗談だと思ったのです。しばらく行くと、水田の向こうの茂みの方から、エー!エー!という叫び声と、アーという唸り声が聞こえてきました。目を凝らして見ると、茂みの向こうで、トラが水牛にかみついているのが見えました。トラはもがく水牛の背中に組みついたまま、首を回し、鋭い歯で水牛の喉笛にじっくりと噛み付いて息の根を止めたのです。」
 「それから、トラは口と前足を使って大きな水牛を森の中に引きずって行きました。セーンは震えが止まりませんでした。トラが水牛に夢中で、子供達の姿が見えなかったのは幸いでした。次の日、大人達が見に行くと、トラが食べ残した水牛の肉がありました。それは、また村の人のご馳走になったのでした。」(原文ラオス語:翻訳安井清子)

                                                                                         
                                                                                                     (寄稿:32期 江藤双恵)