本コースは、小児看護専門看護師教育課程の認定を受けています。2023年4月現在、修了生のうち34名が、小児看護専門看護師の認定を受けています。

高度実践看護では、以下の3つの能力の育成に力を入れています
 ①子どもを一人の人として尊重するPerson Centered Care
 ②温かな思いやりのあるケアを長期的な視点を持って展開する実践力
 ③こどもをめぐる諸問題に関する情報収集能・分析力と臨床課題の解決に資する研究力 

コースの概要
 子どもと家族・学校・地域社会の有する複雑高度な問題を解決する小児専門看護師を目指す方を対象としたコースで、2年課程です。1年次は通年で座学、1年次後期から2年次の1年半は実習と実践に基づいた研究(学位論文)を行います。
 近年の高度実践看護師の臨床機能強化に対応すべく、いわゆる3P科目(Pharmacology薬理, Physical Assessmentフィジカルアセスメント, Pathophysiology病態生理)を追加しています。看護師の役割機能と患者の生活上のニーズを中心にカリキュラムを組み立てています。

主な実習場
 兵庫県こども病院や県内の社会福祉施設等で実習を行っています。兵庫県立こども病院では2023年4月現在、3名の小児看護専門看護師の皆様が、臨地実習指導者・非常勤講師となります。また、教育担当次長様、各病棟師長様にも多くのご指導を頂いている他、必要に応じて様々な学習課題についての相談を受けてくださいます。小児看護の専門性だけでなく、専門看護師としてのProfessionalismを現場で学ぶ事が出来ます。
 2年次以後の実習では、教育やコンサルテーションの実際を展開しながら学びを深めます。社会人学生の場合は、小児看護専門看護師が配置されている病院であればご自身の所属施設で実習する事も可能ですのでご相談ください。

特色ある教育内容

 ①理論に基づいた看護:看護理論を基盤として、神戸市看護大学CNSコース、本学母性看護学CNSコースの学生と共に、小児の発達理論など、子どもに関わる理論を学ぶことができます。自ら経験した事例について理論を用いて分析試み、理論的思考を養います。その他、選択科目として家族看護に関する理論も学ぶ事が出来ます。※他大学・本学の学生は各年度により履修学生数は異なります。

 ②ヘルスアセスメント技術の強化:初代教授片田範子先生の時代に、米国講師を招いて開発した兵庫県立大学オリジナル教科書とビデオを用いて、1年次前期に小児のヘルスアセスメントの基礎を学びます。後期の実習では、実習事例を通して実際にアセスメントを行います。

 ③臨床薬理・看護診断力の強化:臨床薬理入院期間が短縮され、高度・複雑な医療を在宅や学校・地域で継続する必要があります。その中で看護師には処方薬の服用回数・量に関するアセスメントを行い、処方の適切性について医師へとフィードバックしたり、処方の変更を提案する事が求められます。1年次後期の実習事例の分析と共に、主要診療科の医師の診察見学や病棟回診等のシャドーイングと講義を通して臨床薬理と判断力の強化に努めます。実習中は、定期的に学内教員との演習を行い、判断過程の言語化を図ります。

 ④兵庫県立こども病院専門看護師らによる実践力強化:専門医のシャドーイング・診察/相談場面の見学も含み、多様な場面から課題を有する小児と家族に対する専門看護師の役割・機能を学びます。質の高い直接ケアだけでなく、多職種との連携、医療チームへのコンサルテーションなど、実際の場面を通して具体的に理解できます。学生の学習目標に沿って患者を選定してもらい、CNS学生への経験豊富なCNSによる実習内容の振り返りや相談など、専門看護師としての態度や姿勢なども含めて指導を受けることができます。

学位論文について
 小児看護専門看護師として、どのような臨床の問題を解決したいと考えているのかが、学位論文を進める上で最も重要な事となります。このホームページを見ておられる方の多くは日々の臨床の中で「もっと良い看護ができないか、を感覚ではなく、理論に基づいて展開し、多職種にも看護師として提案出来たら」と考えているのではないでしょうか? 是非その内容を文章に書き留めておいてください。それが研究(学位論文)への第一歩となります。大学院の教育課程を通じて、皆さんの「臨床への思い」が、研究計画書から学位論文へと発展してゆく過程を学ぶ事が出来るでしょう。

過去に研究コースを修了している方(修士号取得者)へ
 今後の高度実践看護師に求められるのは実践の言語化・可視化・看護の効果検証能力です。目で見ることができない多面的な現象を多く扱う小児看護領域では、大変難しい課題を要求される時代となりました。良質の研究論文を精読・分析し、エビデンス統合に基づいた根拠ある小児看護を探求できる看護師として、研究コースを終了していることは強みになるでしょう。また修了された研究コースの単位の読み替えができる科目があれば、本学では履修しなくても良いので、より専門科目に集中できる時間を確保する事ができるでしょう。
 一方、近年はエビデンスの統合に関する方法論が急速に進化しておりますので、修士論文を投稿していない方、修了後に院内研究程度の研究経験に留まっている方の場合は、研究方法に関する知識の学び直しが必要と考えて下さい。
 専門看護師コースの学位論文は、自らの実践内容をデータにした事例研究等も可能ですが、事例研究や10例以下の質的研究は原著論文として採択されにくいのが現状です。個別性の高い事例を対象とすることの多い高度実践看護コースの修士論文として、「学術誌への投稿に耐えうる研究課題・デザイン」に取り組んでいただければと願っています。

社会人学生を検討している方へ
 高度実践看護コースの必須科目では、事例を基にディスカッションする、事例を分析するといった学習方法を大切にしています。臨床と大学院の間を行き来する社会人学生は、大学院の学習内容に対する動機や意慾が高く、抽象的な内容のみでは満足しない傾向にあります。原理原則を自らの経験事例を基に具体的に考える事が可能な為、日々のケアへの応用力だけでなく、より良いケアを目指した現場改革案を創出する事にも優れていると感じています。
 社会人学生に最も必要なのは「職場(と家庭)の理解」と、じっくり腰を落ち着けてレポートや研究論文を執筆するための「時間の確保」です。1年次後期(10月~2月)からの実習期間には、必須・選択科目を履修する必要があります。社会人学生として博士前期課程(修士)を2年間で修了することは実質不可能ですので、ご希望の方は長期履修制度をご検討ください。また学位論文の最終段階(11-1月)では、論文執筆のみを考える事ができる時間的・物理的環境を確保できるようにご準備ください。※小児看護の科目・論文指導・面談等については、学生の希望や学習状況に応じてオンラインでの指導を行っています。また17時以降、土日のオンラインでの面談指導についても、状況に応じて実施しています。