成人看護学の授業紹介

 成人看護学では成人期にある人々の特徴と成人看護の中心概念と理論について学びます。成人期を青年期から向老期にわたる長い時期と位置づけ、成人期にある人々の健康問題について生活習慣病の予防や健康増進に向けた看護、また急性期・慢性期・リハビリテーション期・ターミナル期にある人々の健康の回復に向けた看護について学んでいきます。

授業・演習

 2回生で成人健康看護論(急性)、3回生で成人健康看護論(慢性)を学びます。4回生で選択をした人は、統合看護実習、実践研究へと学びを深めます。

ICUでの術後ベッドの説明成人健康看護論(急性)
 成人期における急性期の健康問題、手術など治療による急性期の状況及び看護援助を学びます。また、回復期において対象者が、生活を再構築あるいは再調整するための看護援助を学びます。

成人健康看護論(慢性)
 慢性期の健康問題をもつ人の特徴と、長期の療養を支援する看護援助について学びます。また、在宅での療養生活を支える家族への支援や、多職種との協働について考えます。

実習

 3回生の生涯広域健康看護実習は、全ての領域をローテーションで実習します。成人看護と老人看護は、いずれか1領域で4週間の実習期間を設けています。

 健康問題を抱えた成人期・老人期の人の特徴を理解した上で、専門的な知識・技術や利用可能な周りの資源を使って、その対象の特性に応じた看護援助の計画・実施・評価の過程を学びます。また、対象に看護行為を実施する過程を通して、専門知識に基づく判断力や、看護実践を支える生活援助技術・治療看護技術の習得をはかります。

実習前の技術確認演習、病棟でのカンファレンスの様子

 4回生の統合看護実習では、成人看護学を選択した学生が4週間の実習を行います。生活習慣病の継続的な療養支援が必要な成人期の人やリハビリテーションを必要とする成人期の人を対象として、主体的に看護実践を展開します。また、地域で生活する生活者としての視点を持ち、継続性のある看護を考えて実践したり、利用可能な社会資源の活用について検討したりして、対象者の地域での療養生活を支援していく援助について学びます。

 実習の場は病棟に限らず、外来、手術室、ICU、地域医療連携室など多岐にわたり、より主体的に実践していきます。

研究

実践研究発表会の様子 4回生で成人看護学での実践研究を希望する学生は、ゼミや統合看護実習、研究を通して成人看護学の探求をしていきます。

成人看護学の実践研究のテーマ

令和5年度

  • 職場復帰するストーマ造設患者の社会復帰を支える看護支援
  • 肺がん患者が術後の身体状況を認識し生活を再調整していく過程
  • 肺切除術後患者が望む生活を実現するための効果的な退院支援
  • 消化器がん患者への食事指導における心理・社会的背景を捉える看護技術
  • 慢性心不全患者が抱える療養生活の困難さ
  • がん薬物療法によって生じる脱毛に対する看護支援
  • がん薬物療法中に治療変更が必要となった患者への看護支援
  • 虚血性心疾患患者における心機能維持のための生活の折り合いをつけることを支える看護支援

令和4年度

  • 子育て中のがん患者による子どもへの病状説明に関する看護支援
  • 外来化学療法に移行する患者への感染予防行動獲得の支援
  • 進行がん患者の苦悩に対する看護支援
  • がん薬物療法を受ける患者に対する看護師の就労支援
  • 高齢の整形外科術後患者に対する患者の思いを尊重した退院支援
  • 自覚症状のない肺切除術後患者に身体の理解を促すための看護援助
  • 息苦しさの出現に対して不安を抱える肺切除術後の患者が自分らしく希望をもって生きていけるような看護支援
  • 手術を受けたがん患者が手術後から退院までに感じる回復について

令和3年度

  • 新たな生活習慣の獲得に向けた看護支援と患者の意識の変化
  • 虚血性心疾患に伴う不安等への心理的支援に対する困難さ
  • 慢性心不全患者における増悪予防のセルフケアを支える家族への看護支援
  • がん薬物療法による皮膚障害を予防するための看護支援の実際
  • がん患者の病気の受容に合わせた精神的な看護支援ー治療を受ける患者に焦点を当ててー
  • ASO患者が継続して療養行動を実施できるための看護支援
  • 患者の気がかりを捉える看護援助
  • 退院後の生活に不安を抱える術後患者の家族に対する看護
  • 内視鏡手術後在院日数の短い独居患者に対する退院支援

令和2年度

  • 中年期の虚血性心疾患患者が自己の役割を果たしながら療養生活を再調整するための看護支援
  • 意思決定におけるがん患者と家族の意思の相違に対する看護援助の実際
  • 熟練看護師のケアリング関係の築き方
  • 終末期がん患者の在宅移行支援に関する看護援助の実際
  • 進行・再発期のがんサバイバーの心理面に対する看護支援
  • 人工関節置換術後患者の活動の推移
  • 脳卒中発症により突如として身体機能が変化した患者の自尊感情を高める要因
  • 外来看護師が考える退院後に食生活の変容が必要な胃切除患者への看護支援
  • 肺がん術後患者の回復を促す看護支援
  • 胃がん術後患者が退院後も新たな食事摂取方法と症状にうまく付き合うための食事支援

学部卒業生のメッセージ

成人ゼミ卒業生Aさん

 卒業後、看護師として5年間病棟勤務をした後、結婚と出産を経て、現在は外来で勤務しています。2年半のブランクがあり、復職の際は不安もありましたが、職場の先輩方、家族、保育所、たくさんの方に支えられながら、仕事と家庭の両立に日々奮闘しています。子供には少し寂しい思いをさせてしまっているかもしれませんが、保育所でのびのびと楽しく過ごしている様子を見ると、良い経験ができているようで安心します。最近では『お母さんは看護師さん』と、喜んで話しています。久しぶりの仕事は楽しく、やはり自分は患者さんと接することが好きなんだなと改めて感じます。ゆくゆくは訪問看護など、さらに地域の患者さんの支えとなれるような仕事をしていきたいと思っています。

成人ゼミ卒業生Bさん

 私は急性期病院の脳神経外科病棟で、看護師2年目として働いています。1年目の時は分からないことばかりで、自分のことで精一杯でしたが、2年目になって出来ることが増え、より患者さんの状態をアセスメントできるようになってきたことで、日々看護の楽しさを感じています。
 看護師は、就職してからも学び続けなければならない大変な仕事ですが、人の人生の一部に関わるという大きなやりがいを感じているので、これからもっと頑張っていこうと思います。