博士前期課程(修士課程)

 博士前期課程では、臨床現場における看護実践の改革者である慢性疾患看護専門看護師を養成する高度実践看護コース、研究者の養成を行う研究コースを設けています。

慢性看護学(高度実践看護コース)

 高度実践看護コースは1998年度に日本看護系大学協議会において教育課程の認定を受け(26単位)、2012年度からは38単位のコースとして高度実践看護師の教育を行っております。高度実践看護コースでは、看護学基盤科目、看護学共通科目から教育課程で認定されている科目を履修する他、領域別専門科目を履修します。科目においては、専門看護師による講義がありますし、実習では専門看護師の指導を受け、専門看護師とはという理解を深めながら、卓越した看護の知識や技について学んでいきます。また、実習で取り組んだ事例への取り組みや臨床現場での課題を修士論文へと発展させ、研究能力を養います。

 

成人看護学(研究コース)

 研究コースでは、成人期における健康増進、疾病予防などに関する研究に取り組みます。研究をすすめるにおいては、幅広く関連教養科目を学び、学問に関する知識の幅を広げることが大切です。看護学特別研究では、成人看護学領域の文献をクリティークしながら現象に焦点を当て、文献を読むだけでなく、フィールドワークを行うことで研究課題を洗練していきます。そして、研究計画書を作成し、計画書の審査を受けてデータ収集に入り、分析、論文の作成を行うというプロセスを丁寧に踏んでいきます。

 

博士前期課程修了生の修士論文テーマ

令和3年度 診断初期 2 型糖尿病患者の病いの意味づけ
慢性腎臓病患者の重症化予防に向けた療養生活での減塩を促進する看護支援
令和2年度 2 型糖尿病患者の自尊感情低下に対する熟練看護師の看護実践
心不全患者の増悪予防のためのセルフケア能力を高める看護支援
平成29年度 血液透析導入期患者が生活の編み直しをしていくことを支援する看護
介入の検討
平成28年度 診断初期の 2 型糖尿病患者のセルフマネジメントを支える看護支援
-食生活に焦点を当てて-
慢性心不全患者の生活活動の調整力を高める看護支援の検討
平成27年度 慢性心不全患者における急性増悪移行時の症状の理解を促す看護援
助の検討
脳梗塞の再発予防に向けた血圧のセルフモニタリング促進を促す看護
支援

 

※上記以外の修士論文テーマはこちら

博士後期課程(博士課程)

 慢性期の健康問題を抱えている人に生じている現象や、慢性期の健康問題を抱えている人に対する看護ケアを探求し、研究に取り組んでいきます。看護学共通科目をとおして実践科学としての看護学について学ぶとともに、量的看護研究法応用、質的看護研究法応用などを学び、研究を進める能力を養っていきます。また、自分の研究テーマに関するさまざまな理論に関する書物を紐解き、自分にとっての看護の核となるものを培いながら自立して看護学を追求できるようになることを目指します。

博士後期課程修了生の博士論文テーマ

令和2年度 下肢血管障害が生じやすい2型糖尿病患者への身体の理解を促すフッ
トケアプログラムの開発
平成28年度 重症アトピー性皮膚炎を経験した患者の症状と生活への支障の体験に
ついての解釈学的説明
平成26年度 慢性心不全患者の日常生活における活動の調整
平成25年度 安定期COPD患者の日常生活における体調調整の特徴からみたサブグループの検討
平成24年度 外回り看護師の手術患者に対する先見性に基づいた行動の構造化
平成22年度 2型糖尿病の壮年期男性有職者に対するセルフマネジメントの向上を目的とした遠隔看護の有用性に関する研究
慢性閉塞性肺疾患患者の呼吸器感染症状に関するセルフモニタリング促進プログラムの開発

 

メッセージ

在籍中の大学院生からのメッセージ

大学院博士前期課程 慢性看護学(高度実践看護コース) 竹澤一憲 さん

 私はこれまで透析療法をうける患者様に対して、合併症予防や症状緩和にむけた療養生活の支援について看護実践を積み重ねてきました。その中で、より良い療養生活への支援が行えるようになりたいため、更なる高度な看護を学びたいと思い高度実践看護コースへ進学しました。講義では慢性疾患看護に必要な理論や政策など、包括的に患者様を捉えるために必要な高度な知識や技術を学んでいます。さらに、実習を通して、病気と共にある患者様の生活史や体験を理解した支援の実践について学びを深めています。大学院では自分の課題であった、腎臓病看護という新たな学びを得られるなど日々成長を感じています。課題など大変なことはありますが、それ以上に慢性疾患看護の奥深い学びを得ることができるなど、貴重な日々を過ごしています。

大学院博士前期課程 成人看護学(研究コース) 木村ちぐさ さん

 私は、臨床での看護や教育を行うにあたって、「看護とは何か」について自分の中で明確にした上で、看護実践や教育をしたいと考え、進学しました。

 専門科目の授業では、慢性疾患看護における理論や考え方について、ディスカッションを通して主体的に学びます。ディスカッションでは、臨床経験の中で疑問に感じたり、整理ができなかった現象について話し合うことで、新しい知識を得ることができたり視野が広がっていくのを感じます。

 研究をまとめていくのは大変ですが、大学院で得た新たな知識と、今までの臨床で積み重ねてきた知識や経験を、研究という形にしていく過程を楽しみながら、進めています。

大学院博士後期課程 筒井千春さん

 新卒でCCU(Coronary Care Unit,冠動脈集中治療室)に勤務しました。その中で、心不全患者さんの強い心身の苦痛を何とかできないものか、このような苦痛を経験しないために何かできないかと考えるようになり、心不全患者の看護を専門的に勉強するため博士前期課程に進学しました。循環器病棟勤務や大学教員を経て、現在は心不全患者の症状緩和に関する研究に取り組んでいます。膨大な先行研究を整理、統合し博士論文を作成する過程は困難な道のりではありますが、少しでも患者さんに、臨床に役立つ研究がしたいとの思いはずっと変わりません。エビデンスに基づく実践として、患者さんにどのような看護ケアが行えるのか、論文作成や患者さんへの関わりを通して日々、探索しています。

大学院の修了生からのメッセージ

大学院博士前期課程 慢性看護学(高度実践看護コース)修了 鈴木絵夢 さん

【CNSとしての活動】
 2017年に慢性疾患看護専門看護師の認定を受け、4年目になります。わたしはスタッフナースとして病棟に所属しています。週1回活動日をいただき、午前中は看護外来で膠原病をもつ患者さん、心不全の患者さんの療養相談を行っています。午後はコンサルテーションを受け、他病棟でのカンファレンスに参加したり、院内倫理コンサルテーションチームの定着に向けての活動、病棟・外来連携に向けての活動などをしています。
 慢性疾患をもつ患者さんは、自分の身体に何が起きているのかわからず、身体や生活への不安をもっています。どのように生活をしていったらわからない患者さんも多いです。患者さんの思いや考えを引き出し、それにそったケアができるように心がけています。療養相談の後、患者さんから「ほっとした、安心した」と表情が変わったときにはとてもやりがいを感じます。昨年度は、院内の他領域のCNSと協働して倫理コンサルテーションチームを立ち上げました。院内で新しいシステムなどを立ち上げていくことにも楽しみを感じながら活動をしています。