令和4年11月17日に静岡女子大学家政学部食物学科助教授でいらっしゃいました蒔田和子先生(享年93歳)が逝去されました。蒔田先生は昭和27年4月に静岡女子短期大学家政科に助手として着任されました。昭和42年からは静岡女子大学家政学部食物学科、平成2年からは静岡県立大学食品栄養科学部助教授として栄養士の養成に長年取り組まれ、平成6年3月に退官されました。
蒔田先生は、始まったばかりの国民栄養調査にかかわったことがきっかけで、その土地に暮らす人の食生活や栄養摂取状況調査などフィールドワークを大切にし、研究の礎にしてこられました。調理実習の授業の中では、栄養学や食品学、心理学、民俗学など幅広い視野でご講義いただきました。働く女性のロールモデルとして、また、パワフルで親しみやすいお人柄もあって、多くの学生に慕われていました。
先生が長年取り組まれてきた研究の一部を紹介し、在りし日の先生の姿を偲びつつ、心よりご冥福をお祈りいたします。
♢退官記念特別寄稿「私の中にある食への課題」(蒔田和子)より抜粋
私たちの食生活の営みは、他の動物たちと違って、生命を維持し、栄養摂取するだけが目的ではない。生活する環境に見合った生産物から食物を創造してきたのは、たゆまざる努力と知恵によるものである。その結果、感性の豊かさを象徴する多様な調理法が発達し、地域独特の食文化がはぐくまれてきた。世界の多様な環境風土の中で、生産される食物の相違や摂取の仕方、食事形態、食文化の歴史もまた、人々の健康・生理条件に与えた影響は多大であることを忘れてはならない。
※蒔田先生の訃報は静岡女子大学家政学部食物学科12回生 谷口年江さまにご執筆いただきました。