宮家隆次博士の業績を讃える集い “小便の中に命があった”
年末も押し詰まった昨年12月28日18時よりウェルネススクエア3F(みゆきの里、熊本市御幸笛田町)で菊池養生園・竹熊宣孝名誉園長のお世話で、宮家隆次博士の業績を讃える集いが開催された。
- 開会の挨拶
先ず竹熊名誉園長より自らも所属していた熊本大学医学部第2内科(旧河北内科)宮家グループ(5研)の総勢16名と故人5名を代表して開会の挨拶があり、「今日ここに熊本県知事(出張中)、熊本市長始め各界、各層の方々にご臨席いただき、エリスロポエチン(EPO)に自らの命を繋いでおられる透析患者の方々とそのご家族と共に、宮家博士の業績をたたえる会を催すことが出来ますことは、誠に喜びに堪えません。そして宮家博士に関する記事を外国の著名なジャーナリストのレポートを通して日本全国に報じられた朝日新聞出版部(1)、その他製薬、報道各社に宮家氏の業績を紹介して戴いたことを心から感謝申し上げます。」と述べた。
(2)、その後遺伝子クローニングの方法を用いEPOの製品化への道が開かれた(3)、この分野で世界中から最も注目される存在となった。日本の中外製薬と共同で日本でも製品化が進み、今日に至っている。氏は帰国後、晴耕雨読の生活であったが、不幸にも喉頭の悪性腫瘍に冒されに言葉を失った。
- EPOの歴史と宮家研究室の活動
熊本第1病院の河北誠総院長の詳細な説明があった。始め米国のGoldwasser等が貧血にした羊1000頭から わずか3mgのEPOを抽出したのが1971年(4)、同年再生不良性貧血患者の尿に注目し、最初の報告を熊大医学部の英文ジャーナルKumamoto Medical Journalで発表(2)アメリカに渡り2,55トンの再生不良性貧血の患者尿から10mgの活性比の高いEPOを抽出したのが1977年(3)。
この精製EPOを用いて遺伝子クローニングに成功したのが1985年でした。
この遺伝子工学によりヒトリコンビナント(rHuEPO)の大量生産が可能となり、このEPO製剤は今世界で200万人、日本でも30万人の患者さんの命を支えています可能になった。
その研究者こそこそ熊本市城山半田生まれの宮家隆次氏である。
氏は熊大医学部に進学、大学院で生化学を学び、その後第2内科で臨床に従事し、異常血色素症などの研究指導を行っていた。腎不全の治療は血液透析が導入されてから格段に進歩したが的確な貧血の治療法はEPO製剤が登場するまではなかった。慢性腎不全の貧血例ではEPO産制能が極度に低下していますが、EPOを投与すると、干天の慈雨のように素晴らしい効果が認められます。
EPOは哺乳類にとって赤血球の産生を恒常的にに調節する生理的ホルモンです。更にEPOは造血作用と異なる臓器保護作用が注目されてきて、今後更に発展する可能性が期待されています。この発展の元になった宮家隆次博士の業績は世界人類に対する偉大な貢献であり、これは熊本大学医学部同窓生として、また日本人としての誇りであり、宮家隆次博士の功績は永遠に輝く金字塔であります。
- 宮家博士への謝辞:患者さんを代表して大牟田市の坂井光則さんが述べられた。
- 宮家博士から熊大医学部の若き研究者へのメッセージ「医学の研究は患者のためにあり、名誉や経済的目的ではない。研究結果については正直であれ」と家族を通じて伝えられた。
- 祝辞:熊本市長から祝辞がのべられ、続いて熊大医学部同窓会(熊杏会)神原会長がOECD加盟28カ国の政府が高等教育機関への公財政支出費用は28カ国の平均1.1%に対し日本は0.5%でビリです。我々熊大医学部同窓会は12年前に肥後医育振興会を作り、各会員や一般人から貴重な浄財の寄附を受け、医学の発展と県民の健康を念じて色々の支援事業にをしていますが、去年1月4日に県下第1号の公益財団法人に認定され、医学教育、研究の助成などを行い、熊日のアレンジや肥後医育塾などを行い県民の健康増進を志していますので県民にも知られるようになっています。大學にいると時々今日のエリスロポエチンのような世界的発見が報じられて非常に感激する機会があるのが一番嬉しいですと祝辞を述べた。
- 宮家博士に記念品贈呈が行われ、先生の功績は外国では非常に高く評価されているが、日本でももっと知らしめる必要があると強調し閉会した。
- 懇親夕食会
続いて会場を1階田園キッチンに移しアルコール無し、会費900円の自然食バイキングヘルシーメニューの夕食会が開かれ終了した。
参考文献
(1)メリル・グーズナー著アメリカ医薬品研究開発の裏側。「新薬1つに1000億円!?。東京薬科大学医薬情報研究科訳:朝日新聞出版 2009
(2)Kaneko,F.Miyake,T.et al.Urinary erythropoetin !1,Preparation of crude erythropoietin and its biological activity.Kumamoto Medical J. 24,95,l971.
(3)Miyake, T. Kung.-H,and Goldwasser,E.Purification of human erythropoietin .
J.Biol.Chem252,5558,1977.
(4)Jacobs,etal:Nature.818,806,1985/Lin,et.al.:Proc.Natl.Acade.d.Sci.USA,82.7580,1985.