卒業生の著書紹介 島田宗洋(10回生)

◆略歴

姫路東高等学校卒業(10回生)、1966年東大医学部卒業。医学博士。国立小児病院心臓血管外科医長、埼玉医大、東大、筑波大非常勤講師を歴任、多磨全生園、救世軍清瀬病院長を経て現在、同病院名誉院長、獨協医大特任教授、国際医学協会評議員。

 

◆島田宗洋君のこと

沖國鎮(10回生)

1989年西ドイツ留学。1999年、第一回アショフ田原シンポジウムに招待され、その後二年に一回、日本とドイツで交互にシンポジウムを開催。田原淳(たわら・すなお)氏は心臓が規則的に拍動する仕組みを世界で初めて発見した「ペースメーカーの父」と呼ばれる日本人医学徒です。2000年、田原の200頁に亘るドイツ語原著 (1906) を英語に共訳、ロンドン大学より出版。田原のノーベル賞を超える偉業が世界史の闇に葬られる寸前でした。第一線を退いた後にドイツ語原著「わたしたちはどんな死に方をしたいのか?」、「わたしたちはどんな医療が欲しいのか?」を共訳出版、第三弾「生命との別離」も出版予定です。本は最寄りの書店かアマゾンに注文すれば入手できます。

◆翻訳書の紹介

島田宗洋:医師(10回生)

わたしは、現役を退いてから、以前から気になっていたドイツ語の本を二冊翻訳出版しました。三冊目も今年の夏頃には出版される予定です。三冊とも一般書として出版されています。ドイツ人は何でも知りたがるので一般書で出版されているようです。翻訳書も、実際は医療者向けですが、一般書で出して頂きました。

医療はすべての患者さんに平等に提供されるべきです。ドイツ語の書籍を選んだ理由は、アメリカの場合、医療保険に入っていない患者さんは基本的には医療を受けることができません。別な言い方をすれば、現在、世界経済を席巻しているアメリカ発の新自由主義(フリードマンら)は大きな格差社会を生んでいます。ドイツと日本もその例外ではありませんが、アメリカよりはまだましだと考えられます。医療は、資本主義だけでも社会主義だけでも上手く行きません。いわば「社会資本」(宇沢弘文ら)の考え方の方がより適しているとわたしは考えています。

本の題名と目次を下記に示しておきます。本の内容を想像してみてください。

<一冊目>

題 名

「わたしたちはどんな死に方をしたいのか?」
 ミヒャエル・デ・リッダー著 (2010, DVA出版)
 島田宗洋、W.R.アーデ共訳(2016, 教文館出版)

目 次    
  序文 井形昭弘
  第一章 できることは何でもやるべきか? ―終末期医療の任務
  第二章 人間の命はいつ終わるのか? ―心臓死と脳死のはざまで
  第三章 飢え死にや干からびを防げるのか? ―終末期の人工栄養
  第四章 お世話をしたのに惨めな最後 ―衰弱死と病弱死
  第五章 規制された苦痛! ―疼痛治療の挫折
  第六章 「その時がきたらお呼びします」 ―冷淡な病院の雰囲気
  第七章 「愛する息子は誰のもの?」
 ―アレクサンダー・N君の死への長旅
  第八章 自意識なき人間 ―永続性植物状態
  第九章 人間の意思 ―終末期の自己決定
  第十章 希望は最後まで残る ―緩和医療の価値
  第十一章 医師の任務はいつ終わる? ―緩和医療の限界
  第十二章 死の受容と死の様相 ―展望
  謝辞  
  用語解説  
   
  訳者解説 ―終末期医療の日独比較を含めて
  訳者あとがき

 

<二冊目>

題 名

「わたしたちはどんな医療が欲しいのか?」
 ミヒャエル・デ・リッダー著 (2015, DVA出版社)
 島田宗洋、W.R.アーデ共訳(2020, 教文館出版部)

目 次    
  序文 高久史麿
  プロローグ
わたしたちはどんな医療が欲しいのか? ―問題点の解剖
  第一章 「もう一人でやっていけるでしょうー」 ―白衣の第一歩
  第二章 「独自の道を切り開く勇気」―先達と助言者
  第三章 わたしは「君」になれる? ―人間性は習得できる?
  第四章 患者は顧客?-医療における古い言葉と新しい言葉、
  第五章 システムエラー、過大な要求、倫理観の消失
 ――なぜ患者さんは損害を被るのでしょうか?
  余談 診療ガイドライン ―治療法は自由? 恣意?
  第六章 冠動脈とカテーテル ―心臓病学の正道と邪道
  余談 「画像力? 思考力?」 ―心臓病学の野生繁茂
  第七章 新鮮細胞療法、グロブリ薬、アーユルベーダ、メディカル・ウエルネス関連賞品 ―不吉で疑わしい医療への逃亡とその結果
  第八章 「がんに過去完了形はない」 ―早期発見、知識と不安の板挟み
  第九章 「生きたいの? 死にたいの?」
 ―救命救急センターは悲惨と不幸の坩堝
  余談 「患者に少しだけ尊厳をください!」 ―待つこととその影響
  第十章 麻薬と針と死 ―キュアではなくケアを!
  第十一章 幸運と災難の狭間 ―集中治療センターは危険地帯
  第十二章 最後の支援 ―医師の自死幇助は倫理的に是認できるか?
  展望 真摯で人間的で将来性のある医療への七つの提言
  エピローグ
   
  訳者あとがき

<三冊目>  2021年秋頃出版の予定

題 名 「命(いのち)との別離(おわかれ)」
 ミヒャエル・デ・リッダー著 (2017, DVA出版)
 島田宗洋、W.R.アーデ共訳(2021, 教文館出版)
目 次    
  1) 序論
  2) 自己決定
  3) 事前医療指示書
  4) 受動的および能動的死亡幇助
  5) 緩和医療
  6) 自死および自死幇助
  7) 断食死
  8) 蘇生
  9) 自然栄養と人工栄養
  10) 昏睡と「覚醒昏睡」
  11) 進行認知症
  12) 最後の日々と時間
  13) 心臓死と脳死
  14) 臓器移植
  15) 死の将来像展望

 

目次を読んでどんな印象を受けられたでしょうか?読み易い日本語にしたつもりですが、むつかしいところも沢山あると思います。そこは読み飛ばしてください。

医療の使命は救命延命だけではありません。人生には、往きの医療と還りの医療があります。


  • 往きの人生 vs 還りの人生
  • 往きの医療 vs 還りの医療
  • 救命延命医療 vs 緩和 医療

日本とドイツは、おおむね良く似ています。しかしながら、終末期医療では大きな差異があります。ドイツ人は死を直視していますが、日本人は死から眼をそらそうとしています。

冒頭にも述べましたが、これらの三冊の本は一般書として出版されています。一般的に言って、ドイツ人は何でも知りたがります。内容が良く理解できなくても買うひとが多いと聞いています。皆さんのなかで、これらの本の内容に興味覚えられた方は、一度読んでみて頂ければ幸いです。特に医療関係者の方々に読んで頂きたいと考えています。よろしくお願いいたします。