本学で学ぶ小児看護に関する知識や技術、こどもの看護に関する理念や看護観は、様々な分野で役立ちます。小児看護は新生児期から思春期・若年成人期までの幅広い発達段階を対象としています。また、健康な子どもの保健・医療・福祉・ヘルスプロモーションから急性・慢性・End-of-Life期など、様々な病期に関する看護を学びます。病院以外の多様な就職先も含め、様々な小児看護の活躍の場について情報収集してみましょう。

医療機関の看護師
 小児専門病院・小児病棟は、どの医療機関でも多くの希望者がいます。本学の学生も、県立こども病院兵庫県立尼崎総合医療センターの小児病棟希望者が集中するため、実力があっても不採用となった学生もいます。しかし、そのような方も最終的には必ずどこかの病院に就職できています。採用・不採用はその時々の「受験生の集中」や「運」もありますので、どうか「がっかりしすぎない」でください。不採用は、今一度キャリアを検討するための、千載一遇の好機と考えて下さい。

 ①病院選びの視点の一つは専門看護師が活躍しているかどうかです。本学は小児看護専門看護師教育を日本でいち早く始めた大学です。本学大学院の修了生の先輩がいる病院も、関西圏を中心として多数あります。実習施設である、兵庫県立こども病院もその一つです。
 小児看護の中での専門分化も進展しています。小児看護に関する長期的なキャリアを検討されている方は、専門看護師の先輩がいるかどうかも調べてみてください。
 ※神戸市・関西圏の他、首都圏の小児専門病院、小児がん拠点病院等の情報に詳しい教員がいますので、ご相談も随時受け付けています。

 ②小児専門病院の強み:小児専門病院は環境設備・病棟保育士の配置・院内学級など、環境・人的環境全てが子どものために作られています。専門性の高い看護を実践しており、小児の専門職としてのキャリアアップのための生涯教育も整備されています。小児看護のキャリアを極めたい方にとっては、魅力的なのは小児専門病院と思います。病棟毎に診療科が異なり、高度医療に伴う知識技術だけでなく、複雑で多様な家族の看護も必要となります。

 ③総合病院小児科・小児病棟の強み:総合病院の中でも小児医療を行う病棟が小児科病棟(小児科医が診療する子どものみの病棟)なのか小児病棟(眼科や整形外科など、小児科以外の子どもも入院する病棟)なのか等の違いを理解しておきましょう。
 病院全体として、がん診療拠点病院に指定されていたり、地域連携や成人科への移行期医療に強い病院もあります。地域の総合病院では、肺炎や虫垂炎などの一般的な小児の病気も受け入れており、一般的な急性期疾患の子どもの看護から、キャリアをスタートする事が可能です。
 地方の公立病院の中にはカバーする地域が広いため、1000床を越える大規模な総合病院もあります。そのような場合、看護教育部門の規模も大きく、生涯教育の多様なラダーの中でキャリアを検討する事も可能です。どの病院が良い・優れているかという考えではなく、自分のやりたいことは何かを良く考えて受験する事が重要です。
 採用が決定しても、次年度の退職者がいなければ、必ずしも小児(科)病棟に配置されるとは限りません。採用試験でどの程度希望が通るのかを確認しておく必要があると思います。

 ③NICU(新生児)やPICU(小児の集中治療):小児専門病院の中にあるものと、総合病院の産科病棟とともに母子センター等の名称で設置されているものでは、受け入れる児の疾患の種類や治療の幅も異なります。総合病院の中のNICUでは、産科病棟で誕生した子どもの中で、治療が必要な子どもが入院してくることが多いでしょう。あらかじめ異常がわかっている妊婦が入院している場合もあります。計画出産であれば、出産時に新生児科医が立ち合い、助産師・産科医との協働の元、計画的に受け入れる児も多いと思います。
 PICUも同様で、先天性心疾患・外科疾患などの手術を行う機関では、成人のICUと同様、術後の患者の集中管理となる一方、総合病院等では、交通事故などを受け入れていると思います。小児専門病院のNICUの場合は、他院で生まれた重症な新生児が、緊急搬送されてくる場合も多いと思います。
 看護問題もこのような施設の特性によって変わるので、どのようなタイプの病院のNICU/PICUで、どのようなケアを行いたいのか、よく検討する必要があるでしょう。※あくまで一般論です。病院の特色によりNICU,PICUが対象とする患者が異なりますので、各施設毎に情報収集してください

保健師
 主として市町村の保健センターで、新生児・乳幼児いる家庭の訪問や、保健センター等で健康診断、予防接種を行います。虐待予防、育児ストレス緩和、発達に気がかりがある家庭への対応など、幅広い問題を扱います。市町村によって、受験時期、試験科目などが異なりますが、大体夏休み前までに試験があるようです。2021年度のゼミ生の中には、出身県の保健師として就職する先輩もいます。

養護教諭
 学校の保健室の先生です。子ども達の健康管理、学校の場で行う様々な健康教育、ヘルスプロモーション活動を行います。国公立・私立によって受験時期、試験科目などが異なります。詳細は学校保健系の先生とご相談ください。

特別支援学校 看護師
 肢体不自由児・重度心身障がいをもつ児のための学校の看護師です。人工呼吸器や吸引などの医療的ケア児の健康管理を行います。正規職員を採用している学校は少なく、狭き門ですが、医療的ケアの必要な子どもは増加しており、通学できる子どもの医療内容も複雑高度化しています。将来性のある職種と言えます。フィジカルアセスメント、高度医療の知識が必須ですので、重症集中、呼吸器管理を必要とする小児の臨床経験があった方が良いでしょう。

児童養護施設・乳児院 看護師
 何らかの事情によって、家庭での養育が困難な乳児や18歳未満の児童を養育する施設です。被虐待児も増加しており、心理的な問題も増加しています。一般的な病気に関する健康管理、集団生活における感染予防、急病時の対応、受診の付き添い、慢性疾患を有する子どものセルフケア発達の支援など、施設によって多様な役割・機能を求められます。社会的なニーズも高まっていますが、正規職員の雇用枠が限られている事があります。

小児ホスピス
 LTC(Life Threatening Conditionの略、 重い病気、生命が脅かされる状況の意味)の子どもと家族の宿泊やレクリエーション、リラクゼーション、などを目的とした入所・通所サービス等を提供する施設です。関西圏ではTURUMIこどもホスピスのみですが、社会的ニーズが高く今後増加する可能性があります。入所者・利用者の健康管理、病院との連絡・連携などの役割を担います。TSURUMIこどもホスピス