5月16日(月)
前書き
東日本大震災が発生し、4月1日に予定していた登山が流れた。その後も原発の回復や被災地の復興が遅々として進まず、登山しようと言う気分には程遠い毎日だった。
しかし桜の花も咲き、やっと暖かい春の日差しも当たるようになった。被災地の復興のためには、我々が当たり前の日々を過ごすことが一番だとの話もあり、この際元気よく山に登ろうということになった。
今回目指す三ツドッケ山は奥多摩の中央に位置し、子供の時に遠足に行った日原の鍾乳洞の近くで、「静かで展望の良い山」との女性会員からの紹介で行くことに決めた。
しかし登山直前になって女性全員が健康上の都合などにより、不参加ということになった。男だけで登るのは昨年の黒姫山以来2度目となる。ことに大窪副隊長の不参加により、タクシーの手配やお風呂の調査などが全て私の肩に降り掛って来た。
前日
男性会員から「朝のタクシーは予約した方が良いのでは?」と親切にも電話番号を知らせてきた。そこでタクシー会社に電話を何回も掛けたが繋がらない。何となく不安になって繰り返し接続を試みた。午後になってやっと繋がったが「明日の朝7名で予約したい。」と言ったら「タクシーは1台しかいないので予約は出来ません。またタクシーには一度に7人は乗れません。」とのつれない返事だった。
「奥多摩はそんなに田舎だったのか?」と驚いたものの、いまさら止められないので参加者全員に「電車の中で相談したいから、明日の青梅線は後ろから2両目に乗って欲しい]とメールを入れた。
当日の朝
しかし朝青梅線の2両目に乗ったら、一人足りない。したがって途中下車して青梅からタクシーで行くことなどは論外となった。「とにかく奥多摩駅まで行こう」と言うことになり、終点まで電車に乗った。奥多摩駅で改札を出たら最後の一人は居たが、タクシーは一台もいなかった。
バスを待つと更に一時間掛るので、どうするか皆で議論した。「山は何処でも同じだから川乗山に行こう」と言う意見が勝って、駅前の店に飛び込んで相談したら「今からじゃとても今日中には帰れません。」と笑われた。
「ではバスを待つしかない」と駅前で呆然としていたら、タクシーが突如現れた。しかも団体専用の大きなタクシーだったのでびっくりするやら、喜ぶやら。「東日原まで乗せて欲しい。」と言ったら「これは6名が限度です」と断られた。
しかし「一人は床に腰をおろすから」とか何とか言って、粘って乗せてもらった。タクシーに乗れたお陰で東日原には、大体当初に予定した時間に到着した。早速山に登り始めたが、杉の林の中をジグザグに歩く相当きつい登りだった。

杉の林でひと休み
午前中
出だしの登りは確かに大変だったが、一方高度はぐんぐん稼いでくれたので、まずまず順調な滑り出しだった。やっと杉の林を抜けて尾根筋に出たら、風も爽やかで木々の緑が目に痛いほどだった。千メートルを超す高度になると桜が満開の花を付けていたり、三つ葉つつじの紫の花が鮮やかだったりして、天空の楽園を行くような感じとなった。やはり山は良いと思った。
登り始めてから2時間ほど経ったので、倒木が丁度ベンチになるような所を見付け、昼食を摂った。女性陣がいないので会話は量的には多くはないものの、いつもの通り子供の時の話などをしてゆっくり休んだ。食後2名の隊員が体調不良ということで、そのまま早めに下山することとなった。

みつばつつじ
午後
残った隊員で再び山頂を目指し、何とか一杯水避難小屋にたどり着いた。
5分ぐらい行くと綺麗な水場があるというので、腰の軽いのが二人ばかり水を汲みに行ってくれた。大変美味しい水だった。
小屋に屯していた人が「三ツドッケ山の山頂はすぐですよ。行ってらっしゃい。」というので、更に山頂を目指した。所がピークを二つほど登り降りしなければならず、結構時間が掛った。後で考えれば「直ぐですよ」と言った人は我われに比べれば相当若く、しかも雲取から来たという山の練達者であった。75歳に近くなると若い人の言う少しは相当こたえる。
しかし三ツドッケ山の山頂は展望がよく、遠くにうっすらと富士山まで見えたので大変満足した。記念の写真を撮って早々に下山を開始した。だが登りと違って下りは降れども降れども坂道は続く。バス停に近くなり、杉の林の中に入ったころには完全にばてばてとなった。木の切り株に腰を掛けるつもりで掛けられず、直接地面にばったり腰をついてしまうほど草臥れた。最後はリックを他の人に持ってもらった。こんなにバテたのは初めてだった。山もそろそろ終わりかな・・・などと考えているうちにやっと東日原のバス停に到着し、何とかバスに間に合った。
夕方
東日原から奥多摩駅前までバスに乗り、駅前の観光案内で日帰り温泉を教えてもらってお風呂に入った。前日予約すればそのお風呂のある旅館でも宴会が出来るのだが「今日は板前さんが休みだ」と言うので、風呂から上がってから、その旅館の若旦那に飲み屋を紹介してもらった。
教えてもらった居酒屋は「宮城」と名が付く通り、東北出身の女将が切り盛りしている店で美味しい山菜をふんだんに出してくれた。ワラビ、ぜんまいなどの他に、しどけという今まで聞いたこともない名前の野菜を食べたが、大変美味しかった。しかし私は山でバテタのでアルコール類を飲んでも旨いと思えず、結局割り勘負けをしてしまった。これも初めての経験だった。
反省
もう900mの上り下りは無理だと言うことを痛感した。これからはガイドブックの「登り2時間」に迷わされず、しっかり標高差を調べる事にする。
参加:男性)毛利、森、三ツ本、高広、小泉、吉村、伊藤
行程:奥多摩駅-(タクシー)-東日原バス停-(昼食)-一杯水避難小屋-三ツドッケ山-一杯水避難小屋-東日原バス停-(バス)-奥多摩駅