
大庭 孝雄 さん (4期生)
株式会社JR西日本メンテック 向日町運転所 勤務
Q: まずは簡単な自己紹介をお願いします。卒業年度と学部学科、そしてゼミの先生のお名前を教えてください。
A: 大庭孝雄です。平成19年度に大阪観光大学 観光学部観光学科 観光文化コースを卒業しました。ゼミの先生は中尾清先生です。
Q: 現在のお勤め先とお仕事の役割を教えていただけますか?
A: 現在は、株式会社JR西日本メンテックの向日町運転所に所属し、吹田総合車両所 京都支所にて鉄道車両の「構内運転士」として入換業務に携わっています。入換業務とは、車両基地内での電車の運転・誘導を行う仕事です。
大学在学中にアルバイトとして現在の会社に入り、車両清掃業務に10年、構内入換業務に10年従事し、2025年9月には勤続20年を迎えました。
Q: 現在のお仕事を選んだ理由は何ですか?
A: 一番の理由は、鉄道が好きだったからです。大学内のアルバイト募集の掲示で、電車の車内清掃の仕事があり、関西空港駅という大学から通いやすい職場であることにも魅力を感じて応募しました。
当時は、今の会社に就職しようと考えていたわけではありません。他にやりたいことがあり、その道に進むことを希望していました。しかし結果的にその道には進めず、それでもアルバイトの仕事内容が好きだったため、そのまま勤務を続けました。
アルバイトを始めて3年ほど経った頃、社内で「構内運転士」の募集が出ていました。普段お客様が乗る電車だけでなく、車両基地内で電車を動かす運転士の仕事があることをそのとき初めて知りました。「ぜひこの仕事がしたい」と当時の上司に相談したことが、今の構内入換の仕事につながる最初のきっかけでした。
Q: 具体的なお仕事内容を教えてください。
A: 構内入換業務は、お客様が利用した車両が基地に帰ってきてから、その車両を整備や洗車・清掃作業をするための場所へ移動させたり、翌日の運行に向けて準備したりする仕事です。構内運転士と操車担当(誘導係)の2人でコンビを組み、電車を所定の場所まで動かします。電車の安全な運行や、定刻出発を陰で支えています。
Q: お仕事のやりがいはどういったところにありますか?
A: 車両基地での作業は、危険が伴う場面も多くあります。だからこそ、その日の作業をみんなで無事に終えられたときが、私にとっては何よりのやりがいです。構内運転士は、電車の運行を裏方として支える仕事ですが、長く働く中でお客様の生活の一部を支えているという実感がじわじわと大きくなってきました。
また、基地から車両を送り出すときは「いってらっしゃい」という気持ちで日々見送ります。そして車両が無事に戻れば「おかえり」と迎え、まさに親になったような感覚で業務に向き合っています。構内運転士としての経験を積むほどに、ますます電車への愛着が湧いてきました。
Q: これまでのキャリアで印象的だった出来事や、嬉しかったこと・苦労を乗り越えたエピソードについてお聞かせください。
A: 以前、奈良営業所に勤務していたとき、ダイヤ乱れによって車両がなかなか基地に戻らず、翌日の準備が進められなかったことがありました。情報を集めつつ、戻ってきた車両から順に清掃や準備を進め、すべての作業が終わったのは始発が基地から出発する数分前でした。作業の遅れを取り戻すのはとても大変でしたが、同僚と「なんとか間に合って良かった」と肩を叩き合い、疲れをねぎらい合ったときの達成感は今も鮮明に覚えています。
また苦労を乗り越えたエピソードとしては、構内運転士への再挑戦が挙げられます。実は最初の適性検査で合格ラインに届かず、構内運転士の教育を受けられなかった経験があります。当時はその時点で受講ができなくなる決まりで、一時はかなり落ち込みました。しかし、周囲の人々に励まされ、当時担当していた清掃部門の仕事で正社員として登用いただくことができました。その後、条件が変わって構内運転士に再挑戦できることを上司が教えてくださり、「何度でも受けたらいい」と背中を押してくれました。
さまざまな困難を乗り越え、たくさんの人に支えられながら子どもの頃からの夢だった「電車の運転士」になれたことは、私にとって大きな喜びです。
Q: 大阪観光大学での学びが、現在のお仕事にどのように活かされていますか?
A: 中尾先生はマナーに厳しく、メールの文面なども含めて言葉遣いや礼儀をとても大切にする方です。当時は「厳格だな」と感じることもありましたが、社会に出た今となっては、その大切さと丁寧に指導してくださったありがたさを強く実感しています。
中尾先生自身も、ゼミのフィールドワークでは、現地の方々との関わりや感謝を伝えることを非常に重視していました。それによって、現場に一体感が生まれる瞬間に何度も立ち合ってきました。そんな経験があるからこそ、私も職場では周囲へ積極的に声をかけ、チームワークを高めることを意識しています。声かけを重ねることで仕事上の相談がしやすくなり、作業が円滑に進められるようになったと思います。
ほとんどの仕事は、一人では完結できません。それぞれが役割を果たし、声をかけ合い、連携して初めて成り立つものです。大学時代に中尾先生から教わった「相手への丁寧な接し方」「声かけによって関係性を深める大切さ」は、今の仕事にとても活きています。
Q: 大学で学んで良かったと思うことや、プライベートで活きていることはありますか?
A: 私が大学時代、そして卒業後も含めて強く感じているのは「縁の大切さ」です。私はゼミや授業以外でも中尾先生とご一緒する機会があり、先生が地域の方に私を紹介してくださる中で、多くの人々とのつながりが生まれました。
もともと大学時代から一人旅が好きで、旅先で立ち寄った場所の思いがけない景色の美しさや、人との偶然の出会いを楽しんでいましたが、社会人になった今もそうした一期一会の出会いを大切にしています。「また行きたい」「また会えたらいいな」と思える縁が、人生を豊かにしてくれていると感じます。
大学祭やホームカミングデー、同窓会のイベントなどでは、在学当時にお世話になった方々や同窓生と再会でき、当時の記憶が鮮明によみがえりました。こうしたご縁が今も続いていることは、とてもありがたいと思っています。
Q: 印象に残っている学生時代の授業や、先生とのエピソードを教えてください。
A: 中尾ゼミでは、フィールドワークを通してたくさんの経験を積ませていただきました。地域の方とともにイベントを開催したり、一緒に作業をしながら会話した体験は、私の世界を大きく広げてくれたと思います。
また、中尾先生がゼミ生のことを「自分の息子や娘みたいなもの」とおっしゃっていたのも印象に残っています。同窓生の結婚式のスピーチでも、教え子の幸せを自分のことのように喜んでいらっしゃり、その表情が今でも忘れられません。あの姿を見て、先生がどれだけ私たちのことを想ってくださっていたのかを改めて感じました。
Q: 大阪観光大学に通う在学生に向けてメッセージをお願いします。
A: 私は在学中、就職活動よりも夢に向かって突き進むことを優先していました。結果としてそのとき希望した道には進めませんでしたが、縁がつながって子どもの頃からの夢だった電車の運転士になることができました。そこまでの道のりは決して簡単ではありませんでしたが、挑戦を続けてきた経験が今につながっていると感じています。
在学生の皆さんには、「自分の好きなこと・情熱を注げるもの」に対する気持ちを持ち続けてほしいと思います。そして、挑戦したいと思ったことには、失敗を恐れずに挑んでみてほしいです。たとえ一度うまくいかなくても、その経験は必ず糧になり、しばらく経ってから再び挑戦できる機会が訪れることもあります。
そして、学生生活そのものをぜひ楽しんでください。私自身、小学校から大学までの学生生活の中で、一番楽しかったのは大学時代でした。今しかない時間を大切に過ごしてほしいと思います。
Q: 大阪観光大学の卒業生、OB・OGの仲間へメッセージをお願いします。
A: 卒業後、なかなか会えていない方も多いですが、皆さん元気に過ごしていますか。もし機会があれば、ぜひ同窓会のイベントや大学祭、ホームカミングデーにご参加ください。仕事や子育てで忙しい方も多いと思いますが、久しぶりに集まって学生時代を振り返る時間は、とても貴重だと思います。
私自身も同窓会の総会に参加すると、同窓生と「あの時こんなことがあったね」と懐かしく話すことがあります。大学では、私が在学中にお世話になった事務局の方が今も働いています。そうした懐かしい人たちと再会し、年月の積み重ねを感じられるのも同窓会ならではの魅力だと思います。
Q: 大阪観光大学の教職員の方々へメッセージをお願いします。
A: 多くの人生経験を積んでいる教職員の皆さんには、ご自身の経験をもとに学生たちの挑戦意欲を後押ししたり、「やってみたい」という気持ちに手を差し伸べたりしてほしいです。もちろん、現実的に難しいこともあると思いますが、最初から「無理だからやめたほうがいい」と言うのではなく、できるだけ前向きな声かけで背中を押していただきたいですね。
私自身、中尾先生や職場の同僚・上司にそうやって支えてもらったことで、夢に向かって進み続けることができました。学生の皆さんにとっても、そんなふうに挑戦を応援してくれる存在が大学にいてくれることは、とても大きな支えになると思います。
インタビュー後記:
今回のインタビューでは、大庭さんが大学在学中のアルバイトをきっかけに鉄道の仕事と出会い、20年にわたって現場で経験を積み重ねてきた歩み、そして学生時代の学びが活きている部分について伺いました。「鉄道が好き」という純粋な気持ちから始まった仕事が、構内運転士という夢を叶えることへつながった過程は、「好き」を持ち続けることの重要性を教えてくれます。
「挑戦したことは糧になる」という大庭さんの言葉は、在学生はもちろん、卒業生や教職員にとっても大きなメッセージです。好きなことを好きでい続けること、そして人とのつながりを大切にすること。その積み重ねが、自分の未来を思いがけない形で切り拓いていく…そんな希望を感じさせてくれるお話でした。
「取材・文 ことのは舎 崎山」
