204 菊と桜

江田島の海上自衛隊第一術科学校・幹部候補生学校の見学に行ってきました。穏やかな江田島湾と霊峰古鷹山に抱かれた御影石の講堂やレンガ造りの旧海軍兵学校校舎は、五月晴れのもと、凛とした佇まいです。

鎮守府を中心として海軍の拠点だった呉や広には海軍工廠も集中し、激しい空襲にさらされますが、ここ江田島は教育・訓練施設としての性格が強かったのか、激しい空爆を免れ、多くの施設がそのまま残されています。戦前、戦中にかけて昭和天皇も行幸しました。施設の各所には天皇家の菊の御紋と松、そして海軍の象徴である桜と錨のマークが目立ちます。

第1術科学校となりの教育参考館には、海軍の創設に大きな貢献をした勝海舟をはじめ、海軍兵学校卒業生の武勲や人柄が顕彰されています。一方で、次第に悪化する戦況のなか、無謀かつ捨て身の作戦(神風特別攻撃隊・特殊潜航艇・回天特別攻撃隊など)によって命を落とした若者たちの遺書や遺影から無念の声が聞こえてくるようです。

賀茂高等女学校に在学した作家 大庭みな子(本名 椎名美奈子)は海軍医であった父の転勤によって、小学校(初等科)の後半を、ここ、旧 海軍兵学校内にあった従道小学校(西郷隆盛の弟で初代海軍大臣 西郷従道の名)で学びました。まさか、その数年後に被爆後の広島市内で被爆者の救護活動に当たることになるとは思いもしなかったことでしょう。

事務局の窓から

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