【高校人国記】5 あふれる個性 落語や音楽も

【高校人国記】5 あふれる個性 落語や音楽も

恒例となっている、学園祭でのグリークラブ公演。全国大会に21回出場し、金賞を10回、銀賞を8回獲得している(昨年11月)
教師の広島弁や歩き方 細かく観察

 落語家の古今亭菊丸(68)は高校時代、「小さい頃から好きだった」という物まねを休憩時間に披露し、教室を沸かせた。まねたのは個性的と感じた教師たちの所作。「アズ・スーン・アズ、答えにゃあ、だめで」。教師たちの使う独特の広島弁や歩き方まで細かく観察した。「すぐにクラスの人気者になった」

広島商科大(現広島修道大)に進学。落語研究会に入り、本格的に落語に取り組んだ。地元のラジオ番組にもレギュラー出演し、話芸を磨いた。1975年、古今亭円菊一門に入った。あの物まねに使った広島弁は直し、江戸言葉を覚えた。90年に真打ち昇進。古典落語を専門とし2011年、文化庁芸術祭大衆芸能部門で優秀賞に選ばれた。

 菊丸が「身元引受人」となり、落語界入りを実現させたのが柳家福治(62)。福治も高校卒業後、広島修道大で落語研究会に入った。民間企業に勤めたが、「プロのはなし家になりたい」との思いが募った。1981年に上京し、憧れの師匠である柳家小三治を楽屋に訪ねた。ところが、「会わない」などと師匠は難色。付き添った菊丸が「私が面倒を見ます」と約束し、入門を果たす。なまりを克服し96年、真打ちに昇進した。

菊丸の真打ち昇進をきっかけに広島での定期的な寄席が活発化した。菊丸、福治の古典落語二人寄席も実現した。

グリークラブで声の基礎つくる

 広島を拠点に活動する歌手、南一誠(67)は、後に全国制覇も果たすグリークラブ創設時(68年)のメンバーだ。「声の基礎がつくれた」と、音楽への道を歩むきっかけとなった。

昼休み、放課後、さらに大会前には朝練習も加わり発声練習を繰り返した。3年の時、全日本合唱コンクール県大会で2位に。初代ソリスト(独唱者)にもなった。80年にレコードデビューし、「広島天国」「それ行けカープ」などのロングランを持つ。

2011年から東日本大震災の被災地支援に取り組むほか、最近では出身地の東広島市安芸津町での復興コンサートも実施。「音楽を通じ復興を支援する」とツアーを重ねる。1991年にデビューしたマジシャンのRYOもグリークラブ出身。「高校時代に全国大会を経験し、お客を楽しませる力を培った」

 ロックバンド「柳ジョージ&レイニーウッド」の元リーダーでキーボード奏者の上綱克彦(66)はバンド活動最優先の高校時代を過ごした。放課後は同級生を含む音楽仲間と広島市内の友人宅で練習を重ねた。高校2年で地区予選を勝ち抜き、アマバンドの全国大会に出場した。「コンテストは学校には内緒。偽名を使ったこともある」という。

母校には70年代後半に軽音楽部が生まれたが「(在学中の60年代後半は)エレキバンド=不良の時代。音楽関係の教師からは目の敵にされた」と当時を振り返った。

 大本和則(69)は「高校時代、正義の味方として漠然と憧れた」弁護士として活躍。2006年には広島弁護士会会長として日本司法支援センター(法テラス)広島地方事務所開設に尽力。現在は、家庭裁判所の元調査官などでつくる「FPIC(エフピック)広島ファミリー相談室」代表として離婚後の面会交流支援に力を注ぐ。

地元業界団体でリーダーとして活躍する経済人は多い。昨年11月まで13年間、西条酒造協会理事長を務めた賀茂泉酒造会長の前垣寿男(73)をはじめ、広島県菓子工業組合理事長を務める、にしき堂社長の大谷博国(66)、広島県漬物製造業協同組合理事長で山豊社長の山本千曲(62)がいる。

このほか、経済界ではエディオン社長の久保允誉(69)、東亜地所社長の西本義弘(61)、速太郎本部社長の高木芳郎(59)、良和ハウス社長の和田伸幸(49)、砂原組社長の砂原傑(34)。政界では内閣府政務官で自民党衆院議員の神田憲次(56)=比例東海、庄原市長の木山耕三(66)がいる。

また、「ラグビーがしたい」と崇徳に進学した野坂元明(48)は現在、世界遺産・厳島神社の73代目宮司。高校球児だった森本正治(64)は「料理の鉄人」で知られる。半世紀余り前、日大全共闘議長として学生運動を指揮した秋田明大(73)は現在、呉市に帰郷し、自動車整備工場を経営している。=敬称略
(編集委員・杉本貢)

メモ

<男女共学化>男子校だった崇徳高校は今春、難関大を目指す生徒でつくる普通科特別進学コースで女子生徒の受け入れを始める。2021年4月には併設の中学校も含め、全面的に男女共学にする。男女がともに学ぶことでより視野を広げてもらう狙い。崇徳高校を運営する崇徳学園は16年ごろから、校舎建て替えや男女共学化、学校規模の三つをテーマに、理事会や校内で議論を重ねてきたという。共学化を踏まえた校舎建て替えなど教育施設の整備は19年春に終えた。

投稿日: 2020年2月7日